2013年1月18日金曜日

作家紹介vol.1

本日から、『呼ぶ、呼ぶ、呼ぶ』展 出展作家21名を多摩美術大学でのアトリエメンバーごとに全八回に渡り紹介させていただきたいと思います。第一回目となる今回はこちらのメンバーから。







菊池 奈緒 Nao KIKUCHI







菊池 奈緒「熱のための適切な関係」2012










菊池奈緒「終焉、無数の世界は発光体に」2012










菊池奈緒「影が滲んで   になった」2011









名前のないもの、複数の視点、記憶(忘却)

これらが、私の制作における重要なワードである。
時間の流れの中で取り落とされ、変容してゆく出来事、色彩、暗がり、気配。
そういったものたちに目を向けて行きたい。

私たちは忘れる、という行為から逃れることができない。しかし、失われてしまったものたちが、身体を通じて(幽霊のように)眼前に現れる瞬間がある。
私は作品をつくることで、そういった瞬間に出会うことを切望している。
そうして立ち現れたものは、透明だったり、薄片だったり、滲んでいたりして、名前を持たない事象である。

私の絵に描かれているものは、植物であると同時に植物ではなく、顔であって顔ではない。
私が描きたいものは、単なるモティーフではなく、そこには何か絵画的な事象が表れていないといけないと考えている。
  








相澤 なほ Naho AIZAWA








相澤なほ「中心を紡ぎ織る・北極星の軌道」1167×910  パネルに紙、黒鉛にメディウム











相澤なほ「中心を紡ぎ織る•北極星のプール」1000×1000  パネルに紙、黒鉛にメディウム











相澤なほ「untitled」410×410  パネルに紙、黒鉛にメディウム








私は、絵画の表面を上下左右奥行きなどがあらかじめ存在しない、あるいは無尽蔵に存在させられる、重力からも自由なひとつの空間だと捉えて、自分の<身体>と「絵を描きたい」という<意思>だけを頼りにその中に飛び込み自分の今在る位置を探り、紡ぎ出し記述するため、数を絞ったシンプルで基本的な道具と描法を用いて制作をしています。
絵を描く自分という一人の人間/身体とその運動を自分で分析する行為、虚飾や脚色のない、ドキュメンタリーのような絵が描けたら、と思っています。










末岡 由佳理 Yukari SUEOKA







末岡由佳理「ドローイング」2012










末岡由佳理「無題」2012










末岡由佳理「無題川を隔てて、土地を二分する)」2012








 テーマは「時間と空間」。
目に見えない時間を表現するために空間を利用する。私たちが使っている時間は、数えることのできる数であり、どこでも誰にとっても等しく流れ続けるように思われている。時間はすべての存在者を包括する大きな定義であって、今でもそしてこれからも、その定義の目盛りにつけられた時刻にそって生活が営まれ、存在するものが存在し続ける(と思われる)。しかし今や、時間の経過は私たちの内面にあり、私とあなたの時間の流れ方は違っている。
素材。紙である。何でもないもの(紙)を、不定形状態のなかで生き変えらせる。紙を空間的な不定形状態だけでなく、時間的にも不定形状態へ投げ込む。それは、機械的な反復であったり、あっちに行ったり、こっちに行ったり、はたまた一方通行であったり、空間的、時間的な行き来は自由。紙の交流の中で時間と空間を理解することを進めている。紙は不特定な存在として転がり、その状態の中から、自分がどうするかという選択の楽しみを与えてくれる。一種の“遊び”の感覚の中で。









vol.1 菊池奈緒 相澤なほ 末岡由佳理